東京高等裁判所 平成2年(行コ)60号 判決
控訴人
清和電器産業株式会社
右代表者代表取締役
石川文雄
右訴訟代理人弁護士
中町誠
被控訴人
中央労働委員会
右代表者会長
石川吉右衛門
右指定代理人
川口實
同
藤村誠
同
中村和夫
同
鈴木好平
被控訴人補助参加人
全金同盟福島地方金属清和電器労働組合
右代表者執行委員長
野地芳夫
被控訴人補助参加人
全国金属産業労働組合同盟福島地方金属
右代表者執行委員長
深野一雄
右両名訴訟代理人弁護士
奥川貴弥
右当事者間の不当労働行為救済命令取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 当審における訴訟費用は、参加により生じた分を含め、控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「原判決を取り消す。中労委昭和六三年(不再)第一六号事件について、被控訴人が昭和六三年一〇月一九日付けでした命令を取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠の関係は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示及び当審記録中の書証目録記載のとおりであるから、これを引用する。
控訴人代理人は、次のとおり述べた。
「 団体交渉の方式については、明文の規定がない以上、書面による交渉も当然に許されるのみならず、本件のように団交事項の中でも、とりわけ正確さと一義性が要請される諸協約の締結問題については、「文書」による団交こそが後日の紛争を防止する意において最高の方式ということができる。これを禁止し、直接話し合う方式によらなければ、労働組合法七条二号の不当労働行為になるというのは、その違反が過料又は刑罰の対象になることに照らし、いわれなき処罰範囲の拡大であり、罪刑法定主義によって要請される類推解釈の禁を犯すことに外ならない。」
被控訴人補助参加人ら代理人は、「法律は、団体交渉の方式につき直接の話合いを予定しており、この解釈は、罪刑法定主義に反するものではない。」と述べた。
理由
当裁判所も、本件命令の取消しを求める控訴人の本訴請求は失当として棄却すべきであると判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決一七頁初行の「直接話し合う方式によるのが原則であるというべきであって」の次に「(労使双方が自己の意思を円滑かつ迅速に相手に伝達し、相互の意思疎通を図るには、直接話し合う方式によるのが最も適当であり、その際、書面を補充的な手段として用いることは許されるとしても、控訴人の主張する専ら書面の交換による方式は、右の直接話し合う方式に代わる機能を有するものではなく、労働組合法の予定する団体交渉の方式ということはできない。)」を、同八行目の「理由がない。」の次に「なお、控訴人は、書面による団体交渉の方式が労働組合法の明文に反するものではなく、これを禁止するのは、不当労働行為による処罰範囲のいわれなき拡大であり、罪刑法定主義に反する旨主張するけれども、前叙のとおり、直接話合い方式こそが労働組合法の予定した団体交渉の方式であると解されるから、控訴人の右主張は、独自の見解というべく、到底採用することができない。」を各加える。
二 原判決一八頁二、三行目の「「誓約」という文言が使用されているからといって、」を「「誓約」という文言が使用されているのも、今後そのような不当労働行為を繰り返さないとの約束文言を強調する意味を有するものにほかならないから、」と改める。
よって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、当審における訴訟費用(参加により生じた分を含む。)の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 吉野衛 裁判官 小林克己 裁判官 河邉義典)